扉を開けると本の向こう側の世界が広がっていた。

猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。

名古屋文学サロン月曜会[文学]

  • 2019年2月4日(月) 
  • 第十回 長編読書会「源氏物語」【総角】~【宿木】

最近どこかでわたくしを呼ぶ声がするの。
わたくしと、わたくしの愛した人たちを。
うんと東のほう。その昔、娘について下った伊勢よりももっと東。
きょうは2月4日。立春も過ぎたし、暇だし、声を頼りに飛んでいってみましょうか。



わたくしを呼ぶ声は、尾張の国、今でいう名古屋の東にある「ジャズ茶房 靑猫」というところから聞こえてきました。
のぞいてみると薄明かりの室内では男女が6組に分かれてにぎやかにお話中。



卓の上には本、これは式部の書いた「源氏物語」ですね。

今の時代の言葉で読める「源氏物語」がこんなにたくさん。嬉しい。
老いも若きも集ってわたくしたちのお話について語り合う、「読書会」というのですか。
わたくしが生きていた頃も女房たちを集めて絵や物語を見てあれこれと語り合ったものです。
懐かしいわ。



「源氏物語」は50余帖あるから1年かけて少しずつ読むのね。
きょうは「総角(あげまき)」から「宿木」までなの?
それじゃあ、わたくしの出番はもう終わってしまっていますね。残念です。

わたくしが誰かって? おわかりになりませんか?
物語の中で「六条御息所」と呼ばれていた者です。
光る源氏の君への愛と嫉妬から物の怪になってしまいました。
まさかわたくしもそのまま1000年もこの世を漂うことになろうとは思いもしませんでした。
かわいそうな人、怖い人と思われているらしいですけど、お好きなようにお思いなさい。
最近はこっちの世界のほうが楽しいので、成仏しなくてよかったと思っています。
あ、もう祟る相手は死んでしまいましたから怖がらなくても大丈夫ですよ。ほほほ。

そんなことより「読書会」です。
みなさんわたくしたちのお話をどんな風に思っていらっしゃるのかしら。
ちょっと聞いてみましょう。
こういう時、体がないって便利よ。



「第三部からは、浮世離れしたスーパースター(光源氏)が不在になった分、政治的にも恋愛的にも生々しく人間臭いドラマが展開されている」

「栄華をきわめて、次々と女性をモノにしていく源氏の話は男性向き、宇治十帖は昼ドラの要素もあり、女房向きに書かれているように思う」



「悪いのは、すべて八の宮!」

「八の宮は娘、特に大君への呪縛が強い。薫もだけど彼女も結構こじらせている」

「薫と大君は面倒でこじらせている者同士、八の宮の呪縛さえなければうまくいった2人なのでは?」



「大君が自分の死期を悟っていたとしたら、薫をあえて中君にすすめて後見人にしようとしたのかもしれない」

「当時の宗教観では女性は下に見られていた。宇治十帖に入ってからはそんな女性でも自分の意思で人生を選ぶのだと書いているようにもみえる」

 



「薫ののぞきの趣味(笑)ドキドキするのはわかるけど、どうなの? 遺伝って怖いー」

「薫は柏木(実父)と源氏(養父)のめんどうくさい部分を見事に受け継いでいる。女性の好みが似てる気がする」

「薫はうじうじしてるし、匂宮は女遊びはするけど何か物足りない。やっぱりスター源氏の不在は大きい。輝きが足らない」

「源氏は太陽!近寄ると燃え尽きる。柏木は近づきすぎて燃え尽きた人(笑)」

はい。近づきすぎて物の怪になったわたくしとしては深く頷くしかありません。

彼は太陽のように周りを燃やし尽くす強い生命を持った方でした。
愛と憎しみは背中合わせなのです。

胸がすくようなお話ばかりでもっともっと聞いていたくなります。
できることならわたくしも語りたい。
どなたか体を貸していただけないかしら。

 

場内をうろうろしておりましたらなにやら声が。
「ベストドレッサーを決めてください。選ばれた方は前に出てきてください」

べすとどれっさー?

毎回お題を決めてそれに添った装いで集まるのが読書会の遊びなのですか。
小物でも良いのですね。
今回のお題は「うじうじ」。
うじうじ?
お題というならもっと、藤とか梅とか雪とかいろいろあるではありませんか。なぜそんな珍妙な。



こちらの女性は茶壷の描かれた美しい帯。お似合いですね。
え?こちらがお題ではない?



「宇治抹茶2倍使用のお菓子を持ってきて配りました~。」
袖の下(賄賂)ですわね。
賢明です。何よりも大切なのは栄華。そのために手段を選ぶ必要はありません。



こちらは手ぬぐい。
「うじうじした性格の反対は竹を割ったような性格かな、ということで竹の手ぬぐいです」
お上手!



あら、あなたはどこを通っていらしたの?
「宇治の茂みを通ってきたら『ヤドリギ』が2本絡み付いていました~」
ま、お茶目さん♪



宇治抹茶のお香、ねじれた耳飾り、うじうじとしたキャラクターにちなんだ緑色のすらいむ等、みなさん趣向を凝らしていらっしゃいました。

 

わたくしだったらどうするかしら、と思いをめぐらせているとどこからともなくおいしそうな香り。
読書会の後は懇親会、宴があるそうです。
こう見えてわたくし、宴は大好きなんですよ。



本日は「あつあつの宴」。作家の妹尾河童氏が絶賛した「ピェンロー鍋」で、とろとろの白菜と味の染みた春雨がなんともいえないお味なのですって。
あつあつでおいしそう。
わたくしもいただきたいわ。
どこかに体を貸りられそうな方はいないかしら。



読書会とは違う方々でお話が盛り上がっているようですね。

「『私が考える最強の紫の上』を考えてみました!
実は紫の上は生霊が視えて、源氏のことを『時々髪の長ーい女の人連れてるなー』って思って見てるんですよ。それで…」

なんと大胆な!
ちょっと、みなさん大笑いされていますけど、生霊ってわたくしのこと!?
これは一言物申さなくては。
か、体、体~!





あら!
かぐわしい香りがすると思ったら、これはわたくしが大好きなちょこれいと、ではありませんか?
ちょこれいとを溶かしてお酒を少々入れて、果物や揚げ菓子につけて召し上がるのですって?

なんてこと!

おいしいに決まってるじゃありませんか。
なんのために私が成仏せずに残っていると思っているの?
おいしい物を食べるためですよ!
ちょっと、誰か、わたくしに体を貸して!
私に体を、体、

体を貸せーーーーー!

 



<完>

******

次回のお知らせ

第十一回 長編読書会 源氏物語
日時:2019年3月11日(月) 19:00~
会場:JAZZ茶房 靑猫
課題帖:「東屋」「浮舟」
ドレスコード:「ふわり」
懇親会:青猫にて「桃の宴」(桃の節句にちなんでちらし寿司とブリ大根と白酒をご用意)

お申し込みはこちらの猫町倶楽部HPから

文責:ゆうみ
写真:okko、あきタマ、ジャスミン。、ゆうみ

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